Heat haze〜陽炎〜
ぎゅっと

きつく抱き締められた時に初めて気付いた


私は…あの日から
ずっと
ずっと

この温もりを求めていたんだ……


都合がいいって思われるかもしれない



それでも


この腕の中は
何の不安もない



「やっと…手に入れた…。」


ボソッと呟いたモト兄は
私の髪にそっと口付ける


「もう、行かなきゃ…。
これから仕事なんだ。」



そう言って離れる温もり


心にうっすらと滲む寂しさ


「あ…。」


思わず手を伸ばして
モト兄の服の裾を掴む


「そんな顔するな。
また、すぐに会えるから。着信も拒否取っておけな?」


ポンポン

私の頭を撫でて
モト兄は行ってしまった



その感触を確かめるようにモト兄が触れた場所を触れる



愛しさが込み上げて
私に安らぎを与えた
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