Golden Apple
言っていて空虚感が襲う。
婚約者、なんて。
どこの馬の骨とも分からないあたしなんかに比べたら。
「ミヤシタ」
「ん?」
「この後、ホテル行こうよ」
ビール片手にミヤシタは笑った。
すがすがしい笑みに、あたしはそれをどちらに取って良いのか分からない。
「クラギは優しいな」
「急に」
「でも俺は優しくない」
眼が怒ってる。
あたしは口を噤んだ。周りの騒がしさが一瞬だけ遠退く。
「俺の憧れとクラギの逃げを一緒にすんな」
べ、と出された舌を噛み千切ってやろうかと思った。