Golden Apple

期待も裏切らず、こいつは来てくれるわけだ。

上着を脱いだ細身の身体の方が寒そうで、あたしは溜め息を吐かずにはいられない。


「隣、座っても?」

「勝手にすれば」


どこかに発信機でも付けられたんだろうか。
それとも探し当てたとか。

ミカミは静かにベンチに座る。あたしの肩から上着がずり落ちた。


「まだ怒ってる?」

「うん」

「それは困った」


口調が困ってない。
ずり落ちた上着を直してくれるけれど。


「僕のことが嫌い?」


それは少し悲しそうだった。



< 56 / 475 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop