Golden Apple
組んでいた脚を解く。
「生憎、あたしの権利はそのコウヅカにあんだけど」
「知ってますよ」
「簡単に寝返るとでも?」
「ええ、コウヅカがそう言えば」
男は笑みを見せた。その余裕の理由を、今知る。
「今日、君を買い取りました」
「そう」
「反対側へ行きませんか? どうも、ここは視線が痛いので」
確かに視線を感じていた。それはこの男へのものだったらしい。
何も言わずに立ち上がる。冷たい風が頬に当たる。男も立ち上がって、駅の中へ歩いていく。
その背中の少し後を歩いた。
あたしはその日、この男に買われたらしい。