Golden Apple
遠くでサイレンの音がした。
「家に女が来てる時は帰ってくるなって言われてる」
ミカミの視線がこちらを向く。
そんなこと言われても、困る、か。
まあ、知ったこっちゃないというのが本当の所だろうけれど。
「最初に駅で会った時、そう言ってた」
「小学生が、こんな時間まで」
マンションの前まで来て、エレベーターに乗る時に手を解いた。
「クラギ」
「何?」
「君は好きな時に帰って来て良いんだよ」
あまりにも、似合わないような優しい顔で言うから。
「宿有り飯付きは野良猫にとっては贅沢過ぎる代物だ」