星屑ビーナス
「奥谷」
「…は、はい」
「…悪かったな、さっき」
「……」
そんな中ぽつりと呟かれた一言。
それ以外は問うことも、何もない。
いつも余計なことばかり言うくせにこう言う時は口数少なくて、言葉を選んでいるのか、下手に問いただすべきではないと分かっているのか、また漂う無言。
(…本当、優しくて困る)
そんな空気にも、吐き出される煙は空へと溶けていく。
「…私、煙草嫌いなんですよ」
「アレルギーか何かか?」
「そうじゃないですけど…匂い的に」
「へー…」
すると、彼は頷きながらも私の顔へ煙をふーっと吹きかけた。
「なっ…煙い!最低!」
「最低とか言うな」
「普通嫌いって言ってる人間に煙かけます!?」
「普通吸ってる人間の前で煙草嫌いとか言うか?」
「だって嫌いなんですもん…そうやって煙草吸ってるから背が伸びないんですよ!!」
「あぁ!?俺は煙草吸う前からこの身長だバカ!!」
途端にいつもと同じようにギャーギャーと騒ぎだす私に、彼は反論するものの煙草を片手に持ちながらははっと笑う。