星屑ビーナス
「?奥谷?」
「わっ、真崎さん…と岡田部長」
すると廊下にいたのは相変わらずスーツに身を包んだ真崎さんと、営業部の部長である年配の上司・岡田部長の二人。
真崎さんはこちらを見て何事かと声をかける。
「まだ残ってたのか。どうした?そんな急いで」
「電車の時間ギリギリなんです!」
「あー、もうそんな時間か…いいよ、俺ももう帰るからついでに送ってやる」
「へ?いいんですか?」
「あぁ、どうせ俺は車通勤だからな。代わりにこれ資料室に戻して来てくれ」
「……」
予想外の言葉に少し驚きながらも渡されるファイルを受け取る。
「ほら早く。置いて行くぞ」
「あっ、はい!」
そして急かされる声に、私は急ぎ足でその場を出て資料室へと向かった。
(送ってくれる、って…)
いきなりのことで驚くけど、またひとつその優しさが嬉しい。