星屑ビーナス



ーそして資料室から戻ると、廊下の先程と同じ位置には既に鞄を手にした真崎さんの姿だけがあった。



「戻りました!」

「おう、お疲れ」

「あれ、岡田部長は?」

「もう帰った。俺たちもさっさと帰るぞ」



二人歩き出し、向かったのは会社の近くにある社員専用駐車場。
もう皆既に帰っていることもあり、薄暗いその敷地に停められているのは白いミニバン車一台だけだった。



「乗れ。ちゃんとシートベルトしろよ」

「はーい、お邪魔します」

「お前家どっち方面?」

「あ、住所ここです」



その車に乗り込んでは身分証に乗っている住所を手渡すと、彼はカーナビでその位置を検索して走り出す。



「車通勤なんですね」

「あぁ、時間の融通がきくからな。こうやって帰りが遅くなっても帰れるし」

「……」



目を向ければ、隣でハンドルを動かすその姿。真っ直ぐに前を見る横顔に、つい視線は誘われる。



(…何か、新鮮)



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