星屑ビーナス
「煙草吸っていいか?」
「…この前煙草嫌いって言ったと思うんですけど」
「あー、そういや言ってたな」
だからと言ってどうというわけでもなく、頷きながら彼は煙草に火をつけた。
(聞いてみただけ、っていう)
そういう態度がまた真崎さんらしいといえばらしいけど…変な納得をしながら私は窓を小さく開ける。
「……」
「……」
ほんの少しの無言にふぅ、と吐き出される煙。車内の芳香剤の爽やかな匂いに、苦い匂いがほのかに混ざる。
「真崎さん、いつもこんな時間まで残ってるんですか?」
「時々な。今日は会議のあとに岡田部長と話し込んでてこの時間」
「へー…」
「つーかお前も、こんな時間まで残るなよ。ほどほどの時間で切り上げろ」
「いやー、気付くといつも時間が過ぎてて…」
「ったく、一応女が危ないだろうが」
きつめに言いながらも心配してくれているのであろう彼は、不意に視線を前からこちらへとチラリと向けた。