星屑ビーナス
「…お前、さ」
「?」
「今日もそのネックレスぶら下げてるのな」
「…はい、まぁ」
目の前の赤信号に、段々と車のスピードは緩められ動きは止まる。
「…さっき岡田部長から聞いたんだけど」
「?」
「昔、婚約破棄されたって…本当か?」
「……」
ぼそ、と問いかけられた突然の一言。驚きに思わず言葉はグッと喉に突っかかる。
(…なんで、)
あぁ、そうか。
岡田部長はあの頃商品部の部長も兼任してて、結婚の話も破談の話も全て知っているから
…真崎さんに、話したんだ。
「…、」
別に隠すようなことじゃない
けどどこか彼には知られたくなかった自分も、いる
そんな動揺を覆い隠すように、私はあははと笑ってみせる。