星屑ビーナス



「本当ですよ。もう二年も前の話ですけど『浮気相手と居たいから』って、挙式直前にフラれて破談して…以来そういう話には縁なしです」

「……」



笑って話せるようには、なったこと。

なるべく自然を装う私に、真崎さんはふうっと煙を吐き出しては火のついたままの煙草を灰皿へ置く。



「…そういうことか。だから結婚って言葉にあの反応、ね」

「……」

「何抱え込んでるのかと思えば、浮気して婚約破棄するようなそんなくだらない男のこと引きずってるのかよ」

「引きずってなんて…」

「じゃあ何なんだよ、これは」

「っ、」



するとその左手は、グイッと私のネックレスを引っ張った。



「未練タラタラじゃねーか、毎日毎日身につけて」

「……」



刺さる痛みは、肌に食い込むチェーンの痛みか心の中のものか。わからなくなる気持ちにも、容赦無くその目は見つめる。



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