星屑ビーナス
未練?
ううん、違う
そんな綺麗なものじゃない
「…未練なんかじゃ、ないです」
「…?」
「覚えておくために…一度見た痛い目を忘れないために、身につけてる」
あの日の心の痛みを
全て失くす悲しさを
忘れない、為に
「そんなもの覚えておいてどうするんだよ」
「…覚えておけば、もう同じことは繰り返さないから」
「……」
例え心が少し揺らいでも、これを見れば思い出す。
“どうせ信じても裏切られる”
“想った分だけ傷付くだけ”
その、現実を
「だから私はもう誰にも恋なんてしない。…未来なんて、誓わない」
静かな車内で言い切った私に、彼は私のネックレスから手を離すと火のついたまま置かれていた煙草をグリグリと消した。