星屑ビーナス
ー…
「はっ…くしょん!」
翌日、オフィスの真ん中で勢いよくくしゃみをした私に隣でかおりは呆れたような顔を浮かべた。
「ちょっと大丈夫?風邪でもひいた?」
「うん…多分」
ティッシュで鼻を勢いよくかみ、赤い鼻を隠すようにファンデーションを塗り直す。
昨夜、あの後寒い夜道を家までひたすら歩いたうえに、帰宅後は一人でビールを大量に飲んでやけ酒…。
酔っ払って冬の冷たいフローリングで寝ること一晩、結果見事に風邪をひいたらしい。
「今日は早めにあがったら?昨日も遅かったんでしょ?」
「平気!いつも通り働く!」
気を遣うかおりにも、私は気合を入れ直しては書類に向かう。
ええい、少しの風邪が何よ!寒気が何よ!
(…心の中は、もっと寒い)
…ほんの少しその温かさに触れた後だから、余計寒く感じるだけ。