星屑ビーナス
「奥谷」
「!」
すると突然呼ばれた名前に顔を上げると、そこには書類を数枚手にした真崎さんの姿。
その顔は昨日と変わらない、相変わらずの凛々しい瞳。
「これ、上からの資料。コピーして部署全員にまわすように」
「…わかりました」
いたって普通に渡される書類に、普通を装い受け取るものの目は合わせられない。
「…奥谷、昨日のことだけど」
「…かおり、ごめんこれコピー頼める?私向こうで呼ばれてたんだった」
「え?いいけど…」
「ありがとう、お願いね」
「……」
その言葉を聞く気もない、そう言い切るかのような私の態度に真崎さんはそれ以上言葉を続けることなくオフィスを出た。
「どうしたの?真崎さん相手にそっけない態度しちゃって」
「…なんでもない」
なんでもなく、ない
(…私のバカ)
昨日あんなことがあって、今日こんな態度したら余計こじれるのわかってるのに。
それでも、その目に向き合うことは出来ない
心は閉ざしたまま
その指先が痛い所に触れないようにと