星屑ビーナス
(…その結果、奥谷は怒って以来口も聞いてくれなくなったわけだけど)
「和泉にグーで殴られる日も遠くないかもな…」
「え!?何で!?」
奥谷に禁句を言えばグーで殴る、以前言っていた和泉の言葉を思い出しながら遠い目で呟くと、コツ…とヒールの音がした。
「あら、お望みなら今ここで殴ってあげてもいいですよ?」
「…和泉」
視線を向ければそこにはふふ、と綺麗な顔で笑みを浮かべ現れた和泉。
そいつは俺たちの話を聞いていたらしく、コツコツと黒いヒールを鳴らしながらこちらへ近付いてくる。
「最近知香の様子がおかしいと思ったら…やっぱり何かしてたんですね」
「あ、和泉さんも気付いてたんだ」
「当然です。最近の知香は怒ってるっていうより心閉ざしてるって言うか…折角最近いい方向に向かってると思って安心してたのに」
「……」
「どうせまた真崎さんが無神経なこと言ったんでしょう?本当、せっかちで背の低い男」
「背は関係ないだろ!!」
くそっ、うちの会社の女どもは揃いも揃って気も強いし減らず口ばっかりだな!!
ヒールの高さもあり俺と同じくらいの身長となっている和泉は、長い睫毛と黒い瞳が印象的な顔でこちらを冷ややかに見る。