星屑ビーナス



「…別に、俺だって何も考えず言ったわけじゃない」

「…っていうのは?」




はっきりした物事が好きな俺は、言いたいことは言う主義だ。

けれどあいつに対しての言葉は、いつだってそれだけじゃない。




「奥谷が怒ったり拒むのも目に見えてた。俺が言っていいことかも、わからなかった」





それでも、その言葉を言った理由は





「けど俺は、このままでいいとも思わない。一生ひとりでいいなんて、あいつの本心には思えない」





一人でいい

誰とも未来は誓わない

そう、彼女は言っていた



だけど俺は、それが正しいとは思えない

泣き出しそうな目をした彼女が

本気でそれを望んでいるようには、見えなくて

もう傷つくまいと自分の心を必死に抑え込んでいるような、そんな風に感じられた。





「そう思ったからって言うからバカなのよ。単細胞。ミジンコ」

「なっ!?お前一応上司に向かって…」

「…けどまぁ、たまにはそういう荒療治も必要かもしれないわね」

「…?」



渋々納得したような言い方で呟いて、和泉は右耳に髪をそっとかける。


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