星屑ビーナス



ー…



そうして迎えた、クリスマス当日。



「今日仕事の後彼氏とデートなんだ〜」

「私は昨日のうちに彼氏と一泊しちゃった」

「……」



部署内の皆がうきうきとする中、その部屋の真ん中に座る私は大きなマスクで顔半分を覆い意識朦朧と仕事をしていた。



あれから数日、風邪気味が続いていたもののついに熱が出てしまいクリスマスだというのにこの状態。

視界はぼやけ、頭はボーッとする。けれど体は寒く、時折込み上げる気持ち悪さ…あまりの具合の悪さにまともに化粧すらも出来ず、真っ青なこの顔は誰がどう見ても具合の悪い人間だ。



「ちょっと知香、大丈夫?日に日に悪化してるじゃない」

「あー、うん…大丈夫…」

「熱は計った?」

「計ってない…38度とか見ちゃったら負ける気がするし…」

「何と戦ってるのよあんたは…」



(大丈夫、大丈夫…)

どうせ今日がピークだろうし、明日になったら少しは良くなってるだろうし、あと数日出れば今週末から年末休みだし…。



「よし!営業部行ってくる!」

「そんなフラフラして…気をつけるのよ」



気合を入れ直し、私はオフィスを出て下の階にある営業部のオフィスへと向かい歩いて行った。



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