星屑ビーナス



「ま、真崎さ…?」

「すみませんね、部長。こいつ具合悪いみたいなんであがらせます」

「へ?」

「あー、多分39度はあるな。倒れるのも時間の問題だ。よし、帰るぞ。じゃあ失礼します」

「え?あ、あぁ…お大事に」



腕を引くその手に連れられるがままその場を出た私は、真崎さんとひと気のない階段の踊り場へと出る。



「真崎さん…いきなり何を、」

「お前絶対熱あるだろ。体熱すぎ」

「な、ないです…大丈夫ですから、仕事戻ります」

「嘘つけ」

「本当に大丈夫で…」



そう言いかけたその時、体が限界を感じたのか足からは力が抜けクラッとその場に倒れかけた。そんな私の体をその腕は掴んでは支える。



「どこが大丈夫だよ。ったく…」

「……」



そして真崎さんはそのまま軽々と私を抱き上げて、歩き出した。


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