星屑ビーナス



小さく開いた 心

大丈夫じゃない、

いかないで、

見せられない弱さもきっとその瞳の前では、隠しても意味がないから。





「…未練とかじゃ、ないんです」





首から下げた指輪も

捨てられないままの紙たちも

『未練』と呼ぶものではない





「…わかってる。この前は意地悪な言い方して、悪かった」

「……」

「ただ心がついていかなくて、上手く生きられないだけなんだよな」





ついていかない心を、引きずっているだけ





「だってそれまで何事もなく幸せで、それが普通で当たり前で…ずっとその人といると思ってて。けどそう思っていたのは自分だけだったって、そんな現実が信じられないし信じたくない」





思い出が染み付いたこの部屋から引っ越すことも、物を捨てることすらも出来ずにいるのは、失う現実と向き合えずにいるから。



現実では、もうとっくに全て失くしているのに

思い知るのが怖い



私はもう、一人なんだと





< 172 / 334 >

この作品をシェア

pagetop