星屑ビーナス
「婚約破棄?なにそれ」
「えー?知らないの?超有名じゃん。奥谷さん、結婚直前に彼氏に逃げられたんだって」
「えぇ!?うわ、かわいそー…」
「けどそれも分かるよねぇ。あれだけキツければ男も逃げるって」
「仕事が出来ても結婚出来なきゃ意味なんてないのにね〜、一生一人で生きていくんじゃない?」
「ヒサン〜」
あはは、と聞こえる笑い声。
可哀想、
一生一人、
悲惨、
何を分かった気で言ってるんだよ
お前らが軽々しく口にする言葉に、あいつがどれほど傷付いていると思ってるんだ
その言葉が、どれほど
「…おいお前ら、仕事は?」
「!ま、真崎さん…」
気付けば足はとどまれず俺は給湯室のドアを開け、中へ顔を覗かせる。狭いその室内には、こちらを見て驚きを浮かべる女社員が3人ほど。