星屑ビーナス



「あ、やべ。もう時間過ぎてる…奥谷どこにいるか分かるか?」

「多分まだオフィスにいますよ。店舗見学でしたっけ?道中二人きりだからって手出ししないように」

「するかよ」



そして最後までからかわれながらも、俺は急ぎ足でその場を後にした。



(和泉の奴、俺を先輩だと思ってないな…)

つーか奥谷はあのバカさでどうやってそんなレベル高い男と付き合ったんだ!?

てっきり優しいけどいい歳してフリーター、みたいな軽い奴だと思っていただけに少し衝撃的だ。





『やっぱり真崎さん知香のこと…』





…いやいやいや。ただ先輩としてだな、後輩のことが気になるだけで…あくまで興味。好奇心。

別に、恋とかそういうのじゃなくて…なんて言い訳考えてる時点でどうなんだ俺。



「…はぁ、」



頭をぐるぐるとめぐらせながら、辿り着く先の答えを分かっていながらも言葉には出来ない。

そんな複雑な気持ちに、ひとつ吐き出した溜息。



傷は消えない

けどそれでも、湧き上がる気持ちに嘘はつけない

抱きしめたいと伸ばした腕を自分の意思では止められないように

いつだって、愛しさには抗えない






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