星屑ビーナス



「泣くとマスカラは落ちるしファンデーションも涙の跡になるし、アイシャドウもアイラインもぐちゃぐちゃになるし…そう思うと、自然と涙が引っ込んじゃうんですよね」

「…それはいいことなのか?」

「さぁ、どうですかね。けど私は、それが“すぐに泣かない自分”を作ってくれる魔法に感じるんです」

「……」

「メイクは自信も勇気もくれる。強くもしてくれる。魔法であって、武器なんですよ」





すぐに泣かない魔法

それが彼女を強くして、しすぎている気もする

けれどそれでも清々しく笑うから





「…こんなに可愛い笑顔にさせるなら、確かに魔法かもな」

「……」



その頬を小さくつまんで、良くも悪くも捉えられる遠回しな言い方をした。



「…、は、離してください!セクハラ!」



するとみるみるうちに顔を赤く染める奥谷に、指を離す。



(…照れてる)

奥谷は案外照れやすいし、しかも分かりやすい。

けど真っ赤になったその顔がまた可愛くて、余計触れたくなってしまう。自分のこういう所が、相変わらず幼いとも思う。


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