星屑ビーナス
「うち、姉貴が二人と妹が一人いるんだよ」
「えっ、女ばっかりですね」
「そう。母親も元々美容とか化粧とか大好きな人間でさ、姉貴たちもそれ見て育ったから化粧とか大好きで」
『悠、どう?新しいマスカラ!すごくない?』
『…普通』
『普通って何よ!いつもよりボリュームあるでしょ!』
『男には分からないって。ましてや悠なんて髪切っても気付いてくれないのに』
母や姉たちは、若い頃からいつも化粧だ何だと見た目にこだわっている人たちだった。
新しいものが出れば買って来て、あのメーカーのこれがいいとか、あれはダメとか、話していて。
「でもさ、確かにすごいんだよな。普通の肌もファンデーションひとつで全然色味が変わるし、マスカラひとつで目の印象も全然違うし…普通だったらそこで終わるんだろうけど、俺はそこで『自分も作ってみたい』って思ったんだよな」
「どうして、ですか?」
「その変化が面白い、って気持ちもあったしそんな家族の中で過ごしてたから『自分の作ったものでこんな風に喜んで貰えたら嬉しいだろうな』って思ったのもある」
『見て見て、このリップ。綺麗でしょー』
『……』
嬉しそうな笑顔。
いつかそれが自分の生み出した物で見せられたら、どんなにすごいだろう。