星屑ビーナス
「失礼ですけど…どういったご関係で?」
「あ…以前、ちょっと。お互い連絡先変わって連絡取れないので、お願いします」
「……」
(…何が『ちょっと』だよ)
姿見ただけで逃げられた時点で嫌われてるとは思わねーのかよ、そう喉から出かけた言葉を、ぐっと飲み込む。
…思っても勢いで言うのはよくなよな。ましてや俺には、口出す資格もない。
「…わかりました」
小さく頷いては名刺を受け取る。その時チラリと見えた左手、そこには指輪ははめられていない。
そんな俺の視線に気付くこともなく、その男は小さく頭を下げその場を後にした。