星屑ビーナス



「…圭介とは、やり直せない」



ぽつりと呟いた言葉は、ほのかに賑わう店内に静かに響く。



「…どうしても?」

「…うん。どれほど言われても、頭を下げられても…圭介とは、やり直せない」





好きだった

本当に、大好きだったんだよ



恋人としての毎日

初めてのデートと、キス

記念日

プロポーズの言葉

全部全部、幸せだった



だけど





「あの頃は本当に好きだったから、未練もあった。…けど今は圭介といてもあの頃と同じ気持ちにはなれないから」





今この心を動かすのは

あの人の、言葉だから





「だから、ごめんね」



私は落ち着いたままそう言うと、ポケットから先程しまってあった名刺を取り出し圭介の目の前にスッと差し出すように返す。



「…私さ、ずっと圭介のこと優しい人だと思ってた。いつも穏やかで、何でも許してくれて、抱き締めてくれて…」

「……」

「けどさ、本当に優しい人ってそうじゃないんだってこと知ったんだ」

「…?」


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