星屑ビーナス
かけ算、か…
思えば私も化粧品会社にいるくせにいつも決まったメイクしかしてないや。
それも、マスカラにアイラインもばっちりのいかにもキツい女ですと自称しているかのようなメイク。
(元の良さを引き出す、って言ったって自分の良さなんて分からないしね…)
諦めたような結論に至り小さく息を吐き出した。その一方で彼はまた手厳しく女の子たちに指導をしていく。
「おい、そこチーク濃すぎ。塗り方もおかしいからおてもやんみたいになってるだろうが」
「えー?濃い方が可愛くないですか?」
「薄いピンクを濃く重ねるんじゃなくて、明るい色をほんのり乗せろ。彼女の肌だったらオレンジ系が合うんじゃないか?」
「ほんのり…」
「塗り方の見本見せてやる。えーと、今チーク塗ってない奴…」
すると、そうキョロキョロと辺りを見回す真崎さんとバチッと目が合ってしまう。