星屑ビーナス
「…?」
あれ、あいつどこ行った?
そうゆっくり起き上がり辺りを見渡していると、玄関の方からガチャ、とドアの開く音がする。
「あ、真崎さん。起きました?」
そして少ししてから部屋に現れたのは、ラフな部屋着に身を包み髪をひとつに束ねた奥谷だった。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう…こんな早くにどこ行ってたんだ?」
「いやー、二時間くらい寝たら酔いも覚めてすっきりしちゃって。折角だしゴミ捨てに行ってました」
「ゴミ捨て?」
あれだけ飲んでおいて元気だな…そう思いながら部屋の隅を見れば、昨夜来たときにはまだ置いてあった大きな紙袋か消えていることに気付く。
(もしかして…)
ふとベッド横の小さなドレッサーに目を向ければ、そこに置いたままだったあの指輪もない。
「まさか、ゴミ捨てって…」
「はい。全部捨ててきました」
「よかったのか?」
「指輪はダイヤだし勿体無いかなと思ったんですけど…売るのも何か、違うかなって」
「……」
少し勢い任せな気もするけれど、本人が捨てようと思ったのだからきっとそうするべき時だったんだろう。
その大きな一歩にそうか、と納得する俺に彼女はふふと笑う。