星屑ビーナス
*5
13.臆病の夜
ー…
あの日、真崎さんと飲み明かした日の朝
私はようやく圭介の記憶を呼ぶ物たちを全て捨てた
指輪も思い出たちも、全て
整理して前を向くだけでも広がる世界は違うことを、彼が教えてくれたから。
「……」
「……」
それから数日経った日の、第一商品部のオフィス。そこには真ん中のデスクに座り無言で書類を見る真崎さんと、それをじーっと見る緊張した面持ちの私がいた。
「…浅田さぁん、どうしたんですか?アレ」
「夏に販売する限定セットのデザイン、奥谷さんが悠に持ち込んできたみたい」
「へー…あの真崎さんが一発でOK出すとは思えませんけどねぇ」
「……」
周りの声を聞きながらも、その目は鋭いまま書類を見る。
私が持ち込んだのは、まだ少し先の夏に発売のコフレ…コスメセットのデザイン案。
いつもなら真崎さんに『案を出せ』と言われてから企画やデザインを考える。けれど今は、この有り余る気持ちをどこかにぶつけたくて自分から書き上げ提出したのだった。