星屑ビーナス

14.君が不安に泣くのなら




ーそして、迎えた翌日。

会社のとあるフロアにある大きめな会議室の中、向き合うように四角い形で置かれた長机には、本社・大阪支社・札幌支社…それぞれの会社から集められたリーダー以上の立場の人々がずらりと並んで座る。

そんな中、一番端の席には真崎さんの隣におとなしく座る私の姿があった。



「えー、東京本社としては今期の成績から見て…」

「……」



長く続く上司たちの報告や意見交換。何とも言えない緊張感のなか、チラ…と隣へ視線を向けると、隣では聞いたことをこまめにメモしているらしい彼のペンの先がカリカリと動く。



(…綺麗な字)

男の人にしては丸みを帯びた綺麗な文字。思わずそれに視線を向けていると、彼は手元のノートに何かを書きそれをこちらへスッと差し出した。



「?」



そこには小さく書かれた『寝るなよ』の一言。

失礼な!こういう会議の時くらいちゃんとしてますよ!確かにおとなしく話を聞くのは苦手だけど…。

反論したくても声を発するわけにもいかず、私はジロッとその顔を睨んだ。それに気付いているのかいないのか、彼は表情を変えることなく、話をする上司の方を見たまま。



(けど、こうやって気にかけてくれちゃうんだもんなぁ…)

そういう些細なことひとつも、好きだと思う。


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