星屑ビーナス
ー…
大きなプロジェクトの仕事が、ようやくひと段落ついた日。
帰宅したら、彼女はいなかった。
『今日はかおりの家に泊まります』、そう書かれたメモを一枚残して。
「知香、結婚やめるって」
「……」
翌日、出勤した会社で俺を待ち受けていたのは冷たくそう言い放つ和泉と、気まずい顔の浅田。俺はそんな二人に対し、休憩室の隅で苦い顔で熱いコーヒーを一口飲んだ。
「えっ、それ大丈夫なの?本気…じゃないよね?」
「さぁ?ただ知香の結婚相手は仕事を理由に結婚式の準備もまともに手伝わないで、昨日も早く帰るって言って飲みに行ってたような人らしいし?本気になっても当然じゃないですか?」
「うっ…」
チクチクと刺さるきつい言葉と冷たい視線。それらに耳も心も痛い。
(やっぱり飲みに行ってたと思われたか…)