星屑ビーナス
「でもさ、昨日悠飲みになんて行ったっけ?」
「…行ってねーよ。それはあいつの誤解」
「?誤解?」
「浅田には言っただろ。…昨日、あの日だったんだよ」
「あっ、そっか!昨日だったんだ。じゃあそこに寄ってて帰り遅くなったんだね」
「…?話が読めないんですけど」
「えーと…奥谷さんにはまだ言わないでいてほしいんだけど、」
ひそひそと耳うちをする浅田に、不機嫌そうに寄せられていたその眉間のシワが少し緩んだ。
「…まぁ、そういうことなら昨日のことは仕方ないですけど」
浅田がどういう伝え方をしたのかはわからないけれど、その内容にほんの少し落ち着いたらしい和泉に俺はホッと小さく安心する。が、再度その目はキッとこちらを睨んだ。
「けど、だからといって知香とのことを疎かにしていいわけではないですからね」
「はいはい、わかってるよ…」
「知香、気にしてましたよ。『真崎さんが結婚しようって言ったのはやっぱり勢いとかなのかな』って」
「なっ!んなわけあるか!」
「そんなわけない、なんて本人が一番分かってますよ。けど、話聞いたら第三のバカ女たちにも色々言われてたみたいで、それもあって不安定になってるみたいで」
「……」
第三のバカ女、その言葉から想像つくのは以前も奥谷のことをあれこれ言っていた第三商品部の女たち。どうせまた、俺たちの結婚話絡みであれこれ嫌な話をしていたのだろう。
(…そういえば昨日の電話の声が、心なしか沈んでいた気もする)