星屑ビーナス







メモ一枚を残し家を出た日の、翌夜。誰もいないオフィスには、一人仕事を片付ける私の姿があった。



「……」



仕事がまだ残っているのも事実。だけど、家に帰りづらくてここにいるのも事実。

昨日はかおりの家に泊めて貰ったけど…今日はどうしよう。





『今日は私用事あるから。自分の家帰りなさい』





突き放すようなその言葉も、要するにちゃんと帰って真崎さんと話をしろってことなんだろうけど…。



(…顔、合わせづらい)

昨日は怒りに身を任せて家出てきちゃったけど、よくよく考えたら真崎さんからすれば帰宅して私がいなくて…意味わからないよね。

あーもう!すぐ逃げ出すの本当に私の悪い癖!!



「…はぁ、」



小さく溜息をついては手元の書類をペラ、とめくる。

するとその時、コンコン、とドアをノックする音。その音に誰だろう、そう疑問に思いながらも席を立ちオフィスのドアを開けた。


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