星屑ビーナス



「…ようやく開いた。この馬鹿力」

「…いま、名前…」

「あぁ、初めて呼んだ。…やっぱり照れるな」



再度姿を現した真崎さんは、部屋に足を踏み入れ恥ずかしそうに髪をかく。



「なんで、いきなり…」

「…前から呼び名くらい直そうと思ってたんだよ。どうせ結婚したらお前は奥谷じゃなくて真崎になるわけだしな」

「……」



突然呼ばれた名前になんだか恥ずかしくなってしまい戸惑う私に、彼は同じ視線でこちらをじっと見る。

相変わらず、私はこのまっすぐな目に弱い。



「…私、怒ってるんですから」

「あぁ、和泉から聞いた。悪かった、ごめん」

「……」

「…んな可愛い顔して怒るなよ」

「なっ、」



膨れっ面の私に対しふざけているのか本気なのか、そう言って真崎さんは突然私の腕を引き体を抱きしめた。



「…、」



一瞬にして私の中をいっぱいにしてしまう、彼の匂い。その香りが、自分を素直にしてしまう。


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