星屑ビーナス
「…言葉だけで、まだ渡してなかっただろ」
「…これ、は…」
「お前、ずっと前の男の指輪身につけてただろ。それ思い出したら、それに負けたくないとか似せたくないとか、もっとお前に似合うやつがあるはずとか…変なプライドが出て」
「……」
「でもどれがいいかも分からないから、限られた時間の中でここら一帯のジュエリーショップめぐりして。やっと決めて、サイズとかオーダーして…受け取りに行ったのが昨日」
「じゃあ、昨日のは…」
「丁度その受け取り真っ最中だった、ってわけ」
「……」
彼が結婚式より先に、頭を悩ませてくれていたこと
それは、私への婚約指輪。
前の人からのもののことも考えて、私に似合うかとかあれこれ考えて、ただでさえ忙しい中動いてくれていた。
独りよがり、なんてバカみたいな思い込み。
勢いとか後悔とか、そんなことない
彼はちゃんと考えてくれていた
私のことを、思ってくれていた
「……」
左手を取り、その指輪は薬指にそっと通される。それは驚くほどしっかりと、私の指にぴったりはめられた。