星屑ビーナス
「真崎さん」
「?」
ふたりきりの廊下で追いついた背中に名前を呼ぶと、止められた足。その少し低い位置の頭の上に、コンと温かい缶をひとつ置いた。
「…何だ奥谷、喧嘩売ってんのか?」
「自分が払えって言ったんですよ。コーヒー」
「……」
まさか本当に買ってくるとは思わなかったのだろう、彼は少し驚いてはふっと笑う。
「律儀な奴め」
「そこも私の長所ですから」
それだけを済ませその場を去ろうと来た方向へ戻ろうとした私に、彼はこちらを振り向く。