星屑ビーナス
「おはよう。知香が遅刻なんて珍しいわねぇ」
「うん、やらかした…」
「奥谷さん、頭すごいことになってますよ〜」
笑いながら言うみんなに、ボサボサでまとめることすらもしていない髪を手ぐしで整える。
そんな私の頭をガシッと掴むのは男の人にしては小さい、けれどごつごつとした真崎さんの手。
「わっ、真崎さん…何ですか?」
「頭やってやるからそこ座れ」
「へ?これくらい自分で…」
「その間にお前は自分の化粧を直せ。アイシャドーよれてるぞ」
「…はーい」
鏡を見れば確かに、全力で走ってきた証とでもいうように目元の化粧は少し崩れてしまっている。言われた通りそれを直そうと化粧ポーチからアイシャドーを取り出すうちに、ブラシとヘアゴムを用意した真崎さんはどこからか椅子を持ってくる。
「ほら、椅子座れ」
「?別に立ったままでも…あ、届かないか」
「シメるぞ!!」
図星、とまではいかなくても頭の高さが同じくらいな私の髪をいじるのはやりづらいのだろう。力尽くで椅子に座らせるその手に、渋々私は髪は彼に任せ化粧を直し始めた。