【福は内】とは言ったけども、【福くん】が【ウチ】に来る必要はないと思う。
「…一応、なんかじゃないよ。
私、福くんのこと、好きだもん。」
すっごい小さな声で言った言葉だったけど、福くんにはちゃんと聞こえていたようで。
「俺も鬼塚さんのこと、すっごい好き!!」
と言って私をぎゅっと抱き締めた。
でもすぐハッとする。ここ、玄関!!
「と、とりあえず。
今日はもう大丈夫だから。」
そう言い、福くんを帰らそうとするものの。
しょぼんと悲しげな顔になったので。
「…一緒に豆、食べてくれるなら、家に入ってもいいよ。」
「えっ、ほんと!?」
一気にキラキラした笑顔になり、嬉しそうな福くん。
…せっかくだから、この際、もうひとつお願いをしてみよう。
「あと、もうひとつお願い。
…来年は一緒に豆まきをしてほしい。」
【福は内】って豆まきをしたんだから、きっとこのお願いは叶うと思う。
根拠、なんていうものはないのだけれど、目の前で優しく微笑む福くんを見て、私はそう思った。
END