幸福最高記録更新中!
再び宿題に取り組むも、さっぱりわからない。小さい頃から勉強は苦手だ。
高校だって、家から近いし、バイトも可だと知ってここにしたけれど、偏差値的にはギリギリだった。直ちゃんと千代に教えてもらって何とか合格したのは良いけど、授業についていくのは結構厳しい。
ちなみに千代はもうワンランク上学校も狙えた。直ちゃんにしたってそうだ、二人がこの高校を選んだのは、家から近いから。ま、アタシも人のこと言えないけどさ。
ぼんやりと二年半くらい前のことを思い出していく。
あの頃直ちゃんは、今のアタシらと同じ高三で、卒業間近だった。千代もアタシも彼氏が出来るなんて夢にも思ってなかった頃だ。
(でも、アタシはあの頃、もう…)
「千華、本当に大丈夫?」
「…えっ?あ…大丈夫。ちょっと考えごと」
「考えごと?」
「…小さいときからこうやって、いつも千代に勉強教えてもらってるなぁって」
「それだけ…?」
隠していた気持ちを見抜くような真っ直ぐで、本気で心配してくれているのだと解る瞳で見つめられて、ため息を一つ。
「…千代に勉強教えてもらう時、いつも直ちゃんが一緒で…あの頃、直ちゃんは千代のことが好きなんだって…思ってたなぁって…」
最後の方は声がだんだんと小さくなって、自分でも情けない。けれど、あの頃、勝手に千代を妬んだりした罪悪感が邪魔をして尻窄みになってしまった。
暫くたっても何も返事がなくて、いたたまれなくなって千代を見れば。
「……何、その顔…」
きょとんと言うか、あんぐりと言うか…理解が出来ないって感じの表情をしていた。
「あり得ない、あり得ないよ千華」
「…何でよ、アタシと千代だったらあんた選ぶでしょ。アタシが男ならそうするし」
「私なら千華選ぶよ、って違う!直斗さんは私にとってお兄ちゃんみたいな存在だし、直斗さんも妹だって思ってるはずだし…それに、」
「?」
突然言いよどんでしまった彼女を不思議に思いながら、何も言わずに、先の言葉を待つ。