victim
車に乗せられて、何の会話もなく車は走り続けていた。
リオという人も、こちらには一切顔を向けず、あたしと少し距離を置いた位置で
じっと前を向いている。
十分くらい経った時に、突然車の速度が落ちた。
そして、止まったのはとある倉庫の前。
少し古い、ただの倉庫だった。
リオは、あたしに下りて、とだけ指示した。
下りたら、茶髪の男が勝手に倉庫に入っていくから、あたしはその後ろをゆっくりとした足取りでついていく。
倉庫の付近には、カラフルな頭の不良が数人立っていた。
あたしをギロリと睨み続けているのは、なぜ。
そんな痛い視線を受けながら、
倉庫の中へと入る。
中へ入ると、さらに大勢の男達がいた。
その中で、中央にいる、目立つ男達。
幹部だろうな、って察知した。
明らかに雰囲気が違うんだもの。
それは見事に当たった。
そして、
あたしは、足を止めた。
違う、勝手に止まった。
そして震えだす。
足だけにとどまらず、肩まで震えていた。
だって。
「・・・っ・・・」
明らかに、総長のオーラを出すこげ茶の髪の男は。
良く知った、
あたしの兄だったから。