恋の相手はお隣さん。
上条響(かみじょうひびき)を見た友人達が、口をそろえて言う言葉がある。
「あんたじゃ無理! 諦めな」
そして私が、その後に返す言葉も決まってる。
「絶っ対に、嫌!」
確かにね、響は誰もが見惚れる容姿だし、スーツの似合う大人の男。対する私はただの大学生で、顔もスタイルもいたって普通。年だって七つも違うし、どう見ても不釣合い。
でも無理かどうかなんて、チャレンジしてみなきゃわからない。だから私は誰に何を言われても、響の部屋へ足を運び続ける。
家を出て三十秒。ドア・ツー・ドアの距離に響は住んでいる。
「ひーびーきっ」
「……大声出すな。近所迷惑だろ」