恋の相手はお隣さん。
「……ひび、き?」
「物足りないって顔だな?」
「だって……いきなり、止めるから」
「涙は止まっただろ。ほら、起きろ」
眼尻に残った涙を人差し指で拭った響は、私の腕を引き身体を起こした。
「響……今の、キスって、涙を止めるためにしたの?」
触れられた髪先にも神経が通っているんじゃないかってくらいに、感覚が鋭くなっている。それくらい夢中にさせるキスだったのに、泣いている私をあやすためのものだったとは思いたくない。
床に転がったままの煙草を拾って灰皿に捨てると、響は私をチラリと横目で見てため息を吐いた。そしてふたたび煙草を取り出して、一本取り出す。
「さぁね。わからないならそれでもいい」
「何それ……っ」
まだ熱が燻っている身体を響の胸に預けると、指先の煙草を奪った。
「ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ!」