恋の相手はお隣さん。

「どうだろうな？」

やっぱり教えてくれる気はないみたい。だけど試すような、翻弄するような響の言葉の意味を考えていると、ある感情に行き当たる。
響は、蒼汰に会って欲しいって言った途端、態度が冷たくなった。もしも私が逆の立場だったら、相当面白くない。

「もしかして……ヤキモチ妬いたの？」

言った瞬間、本当の本当に一瞬だけ、響の面食らった顔が視界に入った。滅多に表情を崩さない響が見せた初めての顔が、自惚れを確信へと変える。

「当たり……？」
「さて、ね。時間だ。そろそろ帰んな」

深く息を吸い込むと、煙草の先端がジリ……と音を立てて、一瞬大きく光った。長くなった灰を灰皿に落としてから、壁掛け時計を指差す。さっき見せた表情が嘘みたいに、冷静そのものだ。

「……当たりじゃ、ないの？」
「当てたら、って言ったろ？」
「じゃあハズレなの？」