恋の相手はお隣さん。
#02「駆け引き」
休日のファーストフード店はお昼時とあって、家族連れが多くざわざわと騒がしい。そこに夏休み期間の学生たちが加われば、あっという間に店内は喧騒の渦に飲み込まれる。
でも、もっと騒がしいのが……。
「はぁぁぁっー? なんだ、それ!?」
蒼汰だった。
昨日の響との会話を一部始終話して聞かせて、返ってきた反応がこれだった。
蒼汰はおもむろに私の手首を掴むと、カーディガンの袖を捲りあげ、大げさに目を剥いた。
「げっ……マジでついてるし」
「蒼汰、声大きいってば!」
周囲から一斉に注目を浴びてしまった。蒼汰を軽く睨んで手の甲を抓りながら、そそくさと袖を下ろす。いくら意味がわからないとはいえ、こんな場所で響につけられた痣を晒すほど羞恥心がないわけじゃない。
「痛ぇよっ! ……つーか、お前って馬鹿?」