恋の相手はお隣さん。


響に彼女……その可能性も、考えなかったわけじゃない。だって響は大人の男の人で……みんなが無理だって言うくらい、高嶺の存在だから。
響の隣にいる“誰か”を想像するだけで、どんどん胸の中に不安が広がっていく。
確かな響の気持ちが知りたい。
私が頑張って大人になれば、響の隣にいられるって。それまでは、他の誰も見ちゃ嫌だって、そう言える権利が欲しい。でも今はまだ、その権利すらもらえない。

「駆け引きくらいしてみろよ」

思いがけない言葉に顔を上げる。すると蒼汰はそっぽを向いて、「俺はどっちでもいいけどな」と、素っ気なく付け加えた。

「お前次第だろ、結局は」

私が大人になるまで、響は待っててくれるはず。そう信じてるけれど。

「駆け引きって……どうやって?」

それで、響の気持ちがわかるなら――正解にたどり着けるなら。多少の駆け引きは許されるはず。
私は自分自身に言いわけをして、蒼汰の提案に耳を傾けた。


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