恋の相手はお隣さん。


くっ、と喉を鳴らして笑った響は、マルボロの箱を手の中で握り潰した。

「あれ? 煙草、ないの?」
「あぁ。買いに行くからお前は帰れ」
「……やだ」

財布を取って立ち上がった響のシャツを掴んで見上げた。

「私も一緒に行く!」

響は冷たい視線で私を見ると、聞えよがしにため息を吐いた。

「コンビニに行くだけだ。子供はもう寝る時間だろ」
「……それでもいい」

一緒に行けるなら、行き先がコンビニだって立派なデートだ。響は私の気持ちなんてお見通しのくせに、そこだけは見ないふりをする。
ずるい大人の気持ちを知るには、蒼汰の言う通り駆け引きが必要なのかもしれない。
壁掛け時計を見ると、九時半を少し過ぎていた。門限の十時までには、まだ時間がある。

「まだ時間あるし、いいでしょ?」


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