恋の相手はお隣さん。


「ねえ、響……腕、組んでもいい?」

マンション前の道路を隔て、五百メートル先にコンビニはある。その僅かな間だけでも、恋人気分を味わいたいんだけど……。

「駄目」

でもそんな淡い期待も、間髪入れずに拒否された。

「けちっ! いいでしょ、ちょっとくらい」
「待ってて損はさせないんだろ。俺をガッカリさせるなよ?」

横目でチラっと私を牽制すると、そのままさっさと歩きだしてしまった。
あまりにもつれない態度が面白くなくて。

「――響っ!」

先を歩く響を呼び止めた。

「どうした?」

怪訝な顔をして振り返った響目がけて走ると、襟首を掴んで――唇に触れた。
ほんの一瞬触れただけで、キスとは言えないかもしれない。しかも不意打ちだったからなおさらだ。
それでも少し効果があったらしく、響のクールな瞳が大きく見開かれた。


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