恋の相手はお隣さん。
「お前、いきなり何を」
「……ね? 損はさせないでしょ」
驚かせたことに満足すると、そのまま響を追い越して歩き始めた。
「早くしないと、置いてくよ?」
ドキドキしてることを隠して、精いっぱい平静を装って振り返る。すると響が、呆れたように苦笑した。
「どうだろうな。少なくとも、まだ待たなきゃいけないわけだ、俺は」
「でも、待っててくれるんだよね?」
それは確認というよりも、願いに近かった。響が待っててくれるなら頑張れるから、確かな約束が欲しいの。
「さぁね。気は長くないって言ったろ?」
瞳を細めて私を見ると、すぐに響は追いついてきた。そしてそのまま腕を伸ばすと――私の腰を引き寄せた。
「響……!?」
こんな風に外で触れられるのは、初めてだった。
明らかに動揺して身体を強張らせてしまった私にお構いなしで、響はそのまま歩き出した。