高校生彼氏
バッグから携帯を取り出す。ライトと色違いの携帯。ストラップは私はシルバーの鍵、ライトは錠。二つで対になるもの…。こんな物さえ今は虚しく思える。
《楽しそうだね。カラオケ行っておいで-あきの-》
送信すると回れ右をしてゆっくり歩き出した。後ろの方でライトのメール着信音が聞こえるけど振り返ることはしなかった。すぐに人並みに紛れてたから私の位置はライト達からは分からないだろう。そう思った時だった。
-RRRR~♪-
持っていた携帯が鳴り出す。見るとライトから。すぐに留守電に切り換えたけど………遅かった。
「アキノっ!」
グイッと腕を掴まれて強引に振り向かされる。
「アキノごめん!居たの知らなくて」
さっきのクールな態度とは一変、珍しく凄く焦ってるライト。走って探したのかネクタイが後ろにいっちゃってる。
手を伸ばしてそれを直してあげながら、無理やり作った笑顔を向けた。
「お友達待ってるよ。私との約束なんかいいからカラオケ、行っておいで。その後ゆっくり話そう。色々と………」
「…っ誰があいつらと行くって言ったよ。俺はアキノと………」
「ラブちゃん……可愛い娘だね」
「え?」
「ライト~?どうした急に走って行っちゃっ………て」
追いかけて来たお友達達はライトと居る私の存在に気付いたみたい。皆思い思いに会釈してくる。
「あ、今日はお姉さんと約束してたんだ。ごめんね、綺麗なお姉さんだね♪」
無邪気に笑って会釈するラブちゃん。そうだよ、六歳年上ってことはこういうこと。宣言しない限り、絶対的にカップルには見えないんだ………
「違………」
「いつもライトがお世話になってます。私は失礼するので……」
何か言いかけたライトの腕を引っ張って黙らせ、できる限りの笑顔でそう言い残し私は有無を言わさずその場を後にした――――――