高校生彼氏
バシャバシャ駆け寄って来て傘を差し掛けてくれる。
「ねぇアイツ……もう帰った?」
「あいつ?」
ハンドタオルで顔を拭ってくれる。俺はされるがまま……頭ぼーっとする。
「っくしっ!あ~………あのでかい看護婦」
「南ちゃん!?」
タオルで拭く手がピタッと止まる。顔に張り付いた髪の毛をかき上げて見上げる。
「なに?」
「え、ううんなんでもない。南ちゃんなら今もうすぐ出て来ると思う」
「そっか……まだいたんだ」
待ってた甲斐があった。やっと…もうすぐ会える。
「南ちゃんのこと待ってたの?」
「………」
図星だからか何だか照れくさくて答えらんない。不意にポンと肩を叩かれる。
「片岡くんのおかげみたいよ?」
「は?何が?」
意味がわかんない。なんもしてないのに何が俺のおかげな訳?
「あ、出て来た。詳しいことは本人に会って確かめて。じゃ南ちゃんのことよろしく☆またね♪」
「ちょい待って」
ニコニコ手を振って行ってしまうところをパシッと手を掴んで引き戻す。細い手首。俺の手で握っておつりが来る。
それ自体そんなに力入れたつもりなかったんだけど………
「わっ!?」
ヒールを履いてるからバランスを崩したのか、雨で足下が滑ったのかその小さな体が傾く。
「危な……!」
腕を延ばして止める。
なんか前にもあったなこれ。
「ごめん、勢いつけ過ぎた」
「いいよ。大丈夫……」
そこまで言った時、俺達は改めて気付く。出入り口でこっちを見てるアイツの姿が。
「あ…………」
支えて助けたままの格好の二人は密着していて…誤解されるには十分な材料がそろっちゃってる。