いろんなお話たち
下手したらおかしな話だけど久登さん(怪我人)に包帯とか一式買ってきて貰わないといけないかも。
「…今でもいいのか?」
息を呑んだような気配がしたけど消毒液の事で頭が一杯で適当に私は頷いた。
ドアを開ける。
「?」
肩に何か触れた気がして立ち止まったまま顔を向けると
「あおいさっ!?」
隣にいた久登さんの顔が近づいていた。
ふと気付いた時には互いの吐息を感じる程で。
「っ久、」
続きは唇から発される事なく彼のそれに呑み込まれて。
意識が飛んでる間に離れた唇が軽く数回触れ合った。
頬に添えられた久登さんの手が熱い……いやこれは私の顔が……?
「………っ」
ぱくぱくと情けなく口を開閉させる私をじっと見据えてくる青眼が不意に細まり頬にあった手がぎこちなく離れた。
どうしたのと聞く前に後ろの方で物音がする。
「葵。気持ちは判るがそういう事は中でやれ」
吐息混じりのクラウスさんの言葉にまたこの人に見られたと顔だけでなく全身が熱くなった。
……私も久登さんも、お互いにちゃんと言葉を理解してなかったね……。
「何これ?」
テーブルの上に置かれた硝子製の小瓶。
青い半透明色の硝子の中で揺れる謎の液体。
「馨さんから頂いた。服用すると一時的に髪と眼の色が変わるらしい」
成程一見すると酒瓶のような綺麗な物だが……。
「副作用は?」
見た所やばい薬に違いない。
恐る恐る訊いた私にクラウスさんはニヤリと不敵に笑い
「精神向上による過度の欲求と理性の喪失」
「……利己主義を語る犯罪者になるんだね。使用は止めましょう」
すぐさま瓶を床に叩きつけて壊そうと手を伸ばしたらクラウスさんにひょいと小瓶を奪われてしまった。
「!」
「心配するな。お前じゃ哀れ過ぎて逆に手を出せねえよ」
「私、相手がイケ面でも殺されるのだけは嫌ですからね! 絶対に!」
「(…? コイツ、何を勘違いしてやがる?)」
「(……)七海。副作用の発生率は約8%だ。ほぼ無いに等しい」
冷静な久登さんの言葉に私ははっと頭が冷えた。
久登さんの言葉が本当なら大丈夫…?
「(しかしあの小母様もとんでもない物を生み出したなあ…)呑み方はそのままグイ、と?」
手で小瓶を形作り飲む動作をするとクラウスさんは いや、と首を振り小瓶の蓋を開けると瓶を傾け掌の上に一滴、雫を落とす。
うわぁ真っ青な水……。
そしてそれを舌で舐める。
すると――、
「!」
徐々に黒髪の色素が薄くなっていき綴じた目を開けると青灰色の瞳がそこにあった。
「ひぇ…」
即効性か。
当たり前だけど。
呆ける私を見てクラウスさんは小さく笑むと蓋をした小瓶をテーブルの上に置く。
「……」
す…凄いな。
一瞬でクラウスさんを和服姿のイカれたバンド兄ちゃん、に変えてしまったゾ。
……私が飲んだら何色になるんだろ……。
「ち、ちょっとお借りしても……?」
遠慮がちに手を伸ばすと
「駄目だ」
クラウスさんがきっぱりとそう言った。
「馨さんを信用してない訳じゃねえが、どこのルートから入ってきたのか判らない。従ってお前に飲ます訳にはいかん」
「…それって心配してくれてるってことですよね。ありがとうございます……!」
嫌味な事ばかり言う執事だったがまさかこんな日が来るなんて。
感動で目を潤ませる私に彼は困ったように笑いながら
「ま、後が面倒だからな」
うわぁ!
素直に嬉しい…! と、そうだ。
「じゃあ葵さんも飲んでみて下さいっ」
久登さんは何色になるんだろう。
キラキラした目で期待する私に
「七海。興味本位で手を出していい物かどうかの区別は、あんたにもつくだろう」
思いの外突き放すような久登さんの言葉がして私はしゅんとうなだれた。
是非に及ばず……解ってたけど。
「そういえば沖田さん。悪いんですけどうちに消毒液あるか救急箱の中見てきてくれますか。救急箱自体無いかもしれないんですけど」
「どこか切ったのか? 見た感じはどこも傷つけたようにみえねえが…」
「あ、いえ、私じゃなく葵さんがー…」
「あ~…一体奴らとどこまでやり合ったんだ?」
「……あちら側は一人を残し殲滅。俺に傷一つつけるなって命令だったからな、無抵抗ゆえ容易く片付いた」
薄く笑みを浮かべて言う久登さんの口からなんだか物騒な単語が飛び出したような気がしたが深く聞ける訳がない。
クラウスさんは平然と
「その一人って誰だ?」
なんて訊いてるが。
っていうか……あれぇ?
久登さんの言葉だと…?
「葵先輩、どこにも怪我してないんですか?」
すると彼は静かに一言
「無論」
「……」
という事はなんだ私は騙されたのか?
「(でも消毒って確かに言ったよね……あ!)」
もしかするとキスマークで終わらず接吻まで奪われてしまったのか久登さん。
可哀想に……わざわざ私に頼むなんて乙女さながらその心が傷ついてしまったのね……。
「大丈夫ですよ、葵さん」
「?」
「中々気持ちの整理は難しいかもしれないけど――本当に好きな人とのキスを一回目にカウントすればOK。払拭出来ます」
親指を立ててニッと笑う私に、無反応のお二人さん。
「……(あ…あれ!?)」
私何か間違えただろうか!?
一拍置いてわたわたしそうになったが何とか耐えた。
ここで狼狽えでもしたら尚恥ずかしいもの。
こっ…困るなぁ全く二人共クールなんだから。
「…今でもいいのか?」
息を呑んだような気配がしたけど消毒液の事で頭が一杯で適当に私は頷いた。
ドアを開ける。
「?」
肩に何か触れた気がして立ち止まったまま顔を向けると
「あおいさっ!?」
隣にいた久登さんの顔が近づいていた。
ふと気付いた時には互いの吐息を感じる程で。
「っ久、」
続きは唇から発される事なく彼のそれに呑み込まれて。
意識が飛んでる間に離れた唇が軽く数回触れ合った。
頬に添えられた久登さんの手が熱い……いやこれは私の顔が……?
「………っ」
ぱくぱくと情けなく口を開閉させる私をじっと見据えてくる青眼が不意に細まり頬にあった手がぎこちなく離れた。
どうしたのと聞く前に後ろの方で物音がする。
「葵。気持ちは判るがそういう事は中でやれ」
吐息混じりのクラウスさんの言葉にまたこの人に見られたと顔だけでなく全身が熱くなった。
……私も久登さんも、お互いにちゃんと言葉を理解してなかったね……。
「何これ?」
テーブルの上に置かれた硝子製の小瓶。
青い半透明色の硝子の中で揺れる謎の液体。
「馨さんから頂いた。服用すると一時的に髪と眼の色が変わるらしい」
成程一見すると酒瓶のような綺麗な物だが……。
「副作用は?」
見た所やばい薬に違いない。
恐る恐る訊いた私にクラウスさんはニヤリと不敵に笑い
「精神向上による過度の欲求と理性の喪失」
「……利己主義を語る犯罪者になるんだね。使用は止めましょう」
すぐさま瓶を床に叩きつけて壊そうと手を伸ばしたらクラウスさんにひょいと小瓶を奪われてしまった。
「!」
「心配するな。お前じゃ哀れ過ぎて逆に手を出せねえよ」
「私、相手がイケ面でも殺されるのだけは嫌ですからね! 絶対に!」
「(…? コイツ、何を勘違いしてやがる?)」
「(……)七海。副作用の発生率は約8%だ。ほぼ無いに等しい」
冷静な久登さんの言葉に私ははっと頭が冷えた。
久登さんの言葉が本当なら大丈夫…?
「(しかしあの小母様もとんでもない物を生み出したなあ…)呑み方はそのままグイ、と?」
手で小瓶を形作り飲む動作をするとクラウスさんは いや、と首を振り小瓶の蓋を開けると瓶を傾け掌の上に一滴、雫を落とす。
うわぁ真っ青な水……。
そしてそれを舌で舐める。
すると――、
「!」
徐々に黒髪の色素が薄くなっていき綴じた目を開けると青灰色の瞳がそこにあった。
「ひぇ…」
即効性か。
当たり前だけど。
呆ける私を見てクラウスさんは小さく笑むと蓋をした小瓶をテーブルの上に置く。
「……」
す…凄いな。
一瞬でクラウスさんを和服姿のイカれたバンド兄ちゃん、に変えてしまったゾ。
……私が飲んだら何色になるんだろ……。
「ち、ちょっとお借りしても……?」
遠慮がちに手を伸ばすと
「駄目だ」
クラウスさんがきっぱりとそう言った。
「馨さんを信用してない訳じゃねえが、どこのルートから入ってきたのか判らない。従ってお前に飲ます訳にはいかん」
「…それって心配してくれてるってことですよね。ありがとうございます……!」
嫌味な事ばかり言う執事だったがまさかこんな日が来るなんて。
感動で目を潤ませる私に彼は困ったように笑いながら
「ま、後が面倒だからな」
うわぁ!
素直に嬉しい…! と、そうだ。
「じゃあ葵さんも飲んでみて下さいっ」
久登さんは何色になるんだろう。
キラキラした目で期待する私に
「七海。興味本位で手を出していい物かどうかの区別は、あんたにもつくだろう」
思いの外突き放すような久登さんの言葉がして私はしゅんとうなだれた。
是非に及ばず……解ってたけど。
「そういえば沖田さん。悪いんですけどうちに消毒液あるか救急箱の中見てきてくれますか。救急箱自体無いかもしれないんですけど」
「どこか切ったのか? 見た感じはどこも傷つけたようにみえねえが…」
「あ、いえ、私じゃなく葵さんがー…」
「あ~…一体奴らとどこまでやり合ったんだ?」
「……あちら側は一人を残し殲滅。俺に傷一つつけるなって命令だったからな、無抵抗ゆえ容易く片付いた」
薄く笑みを浮かべて言う久登さんの口からなんだか物騒な単語が飛び出したような気がしたが深く聞ける訳がない。
クラウスさんは平然と
「その一人って誰だ?」
なんて訊いてるが。
っていうか……あれぇ?
久登さんの言葉だと…?
「葵先輩、どこにも怪我してないんですか?」
すると彼は静かに一言
「無論」
「……」
という事はなんだ私は騙されたのか?
「(でも消毒って確かに言ったよね……あ!)」
もしかするとキスマークで終わらず接吻まで奪われてしまったのか久登さん。
可哀想に……わざわざ私に頼むなんて乙女さながらその心が傷ついてしまったのね……。
「大丈夫ですよ、葵さん」
「?」
「中々気持ちの整理は難しいかもしれないけど――本当に好きな人とのキスを一回目にカウントすればOK。払拭出来ます」
親指を立ててニッと笑う私に、無反応のお二人さん。
「……(あ…あれ!?)」
私何か間違えただろうか!?
一拍置いてわたわたしそうになったが何とか耐えた。
ここで狼狽えでもしたら尚恥ずかしいもの。
こっ…困るなぁ全く二人共クールなんだから。